ロト6に攻略法はあるか

このあいだのロト6攻略法に関して「実際に攻略法でたくさんの人が当たっているのだから、わりと完全に乱数とは言えないのではないか」というようなコメントをいただいた。(ぼくが読み違えてたらすみません。)

実際に、第230回は攻略法に従って1等を当てた人が167人いたわけだ。
167人もの人が当てたのだからこの攻略法には根拠があるのではと思ってしまう人も多いかと思うが、実はこの結果は特に「ロト6の番号は乱数である」ということと矛盾しない。
なぜかというと、ロト6の一回の抽選での各々の当選は独立試行ではないからだ。


話を簡単にするために次のようなゲームを考えよう。

  • 千人が1ゲーム100円払って参加する
  • 賭けは1から100までが等確率で出るサイコロを振ることによって行い、どの目が出るかに賭ける
  • 参加料の全額を、当たった人が山分けする

このゲームは自然な状態では1から100までにだいたい10人づつが賭けることになる。
当選の確率は理想的には1%で、当たったときの受け取り額はほぼ1万円となる。また典型的には当選者は毎回10人前後になる。
ここでだれかが「オレは攻略法を考え出した。次回の数字は1だ」と言い、100人近くの人がこれを信じたとする。
100人は"攻略法"にしたがって1に賭け、残りの900人は1から100までの数字に9人づつ賭ける。
このとき実際にサイコロの目が1になる確率は"攻略法"とは無関係に100分の1のままだが、たまたま1が出たときの当選者の数は109人(攻略法による100人と適当に賭けた9人)になり、受け取り額は千円弱まで落ちる。
つまりこの場合、攻略法にしたがうことで当たった人数が多いということは「攻略法によって当たる確率が高くなる」ことを表しているわけではなく、「攻略法によって同じ番号に賭ける人が増える」ということを表しているだけなのだ。
第230回ではこのようなことが起こったという可能性は十分にある。
とはいえこれだけでは「ロト6がランダムでも230回のようなことは十分に起こる」ということが言えるだけで、「ロト6はランダムである」ということにはならない。


ではロト6はランダムなのだろうか。
絶対にランダムだと言い切ることは原理的にできないので(というか、そもそもランダムとはなにかということ自体が定義できないので)、ある程度の考察に留まるがそこはご勘弁。
まずは過去の当選番号をロト6のサイトから持って来る。
第230回までの当選数字をカウントして分布を調べると、1から43の数字の出現頻度は次のようになった。(横軸が当選数字、縦軸が出現回数)

平均32.09回、標準偏差26.22だ。
24が17回しか出ていなかったり30が45回も出ていたりするので偏りがあると感じる人もいるかもしれないが、サンプル数が1380しかないものを43個に分けているのでこの程度の偏りはしょうがないのだ。
ためしにVBの乱数を使って1380個の数値を生成してみたらこのようになった。

平均は当然同じだが、標準偏差は65.04になった。
つまりロト6の当選数字はかなりばらつきが少なく均一である。

また例えばロト6の数字がランダムだとすると、2^6=64回に1回は全ての数字が下半分に集まり、同じくらいの頻度で全ての数字が上半分に集まるはずだ。
実際に全ての数字が下半分に集まっているのは230回中3回、上半分は5回なので、ここを見てもロト6は比較的ばらつきの少ない乱数のように振舞っている。


普通はここで乱数らしさを測るために当選数字の系列に対してさまざまな検定を行うのだが、ロト6は6個づつの組になって並べ替えが行われているのでどうにもやりにくい。
また各種の攻略法の中には直前ではなく数回前との相関が強いという主張のものもあり、ここまで含めた相関を否定していくのは容易ではない。
そこで、ちょっと別のアプローチをしてみる。


230回で当選した攻略法は、過去の当選数字を斜めに拾っていくと言うものだった。
この方法を実践した場合、これまでにどれくらい当たっているのだろうか。
 攻略法その0:過去の当たり番号の表をN回前の本数字1、N−1回前の本数字2、、、N−5回前の本数字6、と過去の当選数字の表を斜めに拾う。(230回の一等の攻略法)
 結果:1等1回、2等0回、3等1回

驚いたことに、「知る人ぞ知る攻略法」であるはずのこの方法で、過去のいずれかの時点の当選番号を斜めに取っていった場合、第230回が初めての一等当選なのだ。そして、2等は一度も当たっておらず、3等が一度だけ当たっている。
つまりこの方法は、攻略法として認知されているにも関わらず、過去の実績はゼロに近いのである。
では、次に僕が考えたデタラメな攻略法をいくつか同じ方法で試してみる。

攻略法その1:過去の当たり番号の表をN回前の本数字6、N−1回前の本数字5、と230回の攻略法と逆向きに拾う
 結果:1等0回、2等0回、3等5回

3等の当選回数が一気に上がった。この攻略法は229回の時点では攻略法0よりはるかに「いい攻略法」であったということになる。
攻略法その2:過去のある回の当たり番号の最初の3個とその2回あとの当選番号の後ろ3個を選ぶ。
 結果:1等0回、2等0回、3等7回

3等の当選回数がさらに上がった。
もっと「いい攻略法」だって作れる。
攻略法その3:過去のある回の当たり番号の最初の数字に2を足し、2番目の数字に3を足し、、、6番目の数字に7を足したものを選ぶ。ただし43より大きくなったものは43で割ったあまりを使う
 結果:1等1回、2等0回、3等2回

過去の数字との差を取るなどしてむりやりこじつければ、1等が2回も当たるような攻略法でも容易に作れる。


つまりなにが言いたいのかと言うと、たった230回のサンプルでどの攻略法が有効かといった議論をすることにはなんの意味も無いということだ。
実際に攻略法と言うものはあるのかもしれないしないのかもしれない。
ロト6の数字はランダムであるかもしれないしそうでないかもしれない。
いずれにせよ、たった230回しか行われていないものの中にむりやり過去との相関を見つけることは可能だし、いくらでも都合のよい攻略法を作ることも可能だ。
しかし現在までのところ、適当に数字を選ぶのに比べて有意に効果的な攻略法は無いようだ。