遺伝子の欠陥が自動的に修復される?

メンデルの法則を覆す研究結果、米国の科学者チームが発表
本文から引用させてもらうと、

今回行なわれた実験でパーデュー大学の科学者たちは、シロイヌナズナにおける「ホットヘッド」(hothead)と呼ばれる突然変異の遺伝について、必ずしも古典的な遺伝法則が当てはまらないことを発見した。ともに突然変異遺伝子を2つ持っていて奇形の花をつける両親から生じた子の世代の10%が、奇形の花ではなく、祖父母あるいはそれ以前の世代と同じように、正常な白い花をつけたのだ。
 ホットヘッド遺伝子を持っているのに正常な花をつけたシロイヌナズナは、祖父母以前の世代から受け継いだ遺伝情報をどこかに保持していて、これを正常な生育の鋳型として使ったと見られている。

ということらしい。
どうにもこれがうさんくさい。
遺伝情報が壊れていて奇形になっているものをなんらかの方法で自動的に修復するとしたら、そのためにはかなりの冗長度と多数決のメカニズムが必要になる。
まあそこは実装されているとしてもいいが。


そもそもメンデルの法則は常に真実であると信じられてきたのか。
例えばメンデルの3つの法則の1つ「独立の法則」。
これは例えば「えんどう豆の「まる・しわ」と「緑葉・黄葉」のような形質は完全に独立してあわられる」というものだ。
メンデルは遺伝子と染色体というものを知らなかったので、これらの形質を支配するそれぞれ独立した要素があると考えていたわけだ。
実際には同一染色体上の複数の遺伝子は組になったままで子孫に伝えられる確率が高いから、特定の形質の間には相関が見られることは当然ある。
ほかにも、複数の遺伝子が相互に作用し合うような複数対立遺伝子によって形質の発現が左右されるような時には当然メンデルの法則はそのままには当てはまらない場合がある。


もちろん、これらの反例はオリジナルのメンデルの法則には反するがそれはメンデルの考えが根本的に誤っていたということではない。
形質を左右する要素が2個1対になって両親から半分づつ伝えられ、相互の優先順位によって発現形質が左右されるというアイデアそのものはまったくその通りである。
ただ、場合分けが思っていたほど単純ではなかったというだけのことだ。
いずれにせよ、厳密な意味ではメンデルの法則は絶対の真理として信じられているわけではない。


では今回の発表はどうなのか。

彼らの主張によれば「欠陥のある遺伝子を受け継いでも、その遺伝情報を修正して、それ以前の世代と同じように正常に発育する場合がある」のを確かめるために「突然変異遺伝子を2つ持っていて奇形の花をつける両親」の純系を使って実験をした。
ところで彼らはどのようにして純系(この場合、突然変異遺伝子を二組持つ個体)を識別したのだろうか。
普通は純系の識別は第一世代の子孫(F1)を見て行うと思うのだが、彼らの主張によれば突然変異遺伝子の純系同士を高配しても正常な個体が出来てしまう。
すると純系でもそうでなくてもF1に正常個体が混ざってしまうので、F1を観察することでは純系の識別が出来ないことになってしまう。
他にどうやって純系を識別できるかと言うと、これはもう遺伝子を直接同定するしかない、んじゃないかなあ。
最初読んだときに、彼らは遺伝子そのものの同定に成功していないかのように思ってしまったんだけど、いま読み返したら、彼らが同定できてないのは遺伝子修復に関与する遺伝子のことみたいね。
うーん。
じゃあやっぱりこのホットヘッド遺伝子そのものは同定されてるのかなあ。
「この人たちの主張通りだと純系の選別自体が出来ないから実験自体無理じゃん」って書こうかと思ってたんだけど、なんか尻すぼみになっちゃった。
とりあえずこのケースに関しては、複数対立遺伝子の考え方でも説明できるのは間違いないですが。


えー、続報を待ちます。
そのうち日経サイエンスとかに詳しい話が載るでしょう。