浮く地球儀と安定な平衡点

週末に神田の三省堂書店の地図コーナーに行ったのだが、そこで不思議なものを見た。
「磁石で浮く地球儀」とか書いてあったと思う。

図のような感じで、地球儀の上端に磁石がくっついていてそれがフレームの上半分とくっついているのだ。
最初「どこが浮いてるんだ?」と思ったが、一旦引き剥がして丁寧に近づけていったら途中で「グンッ」という手ごたえと一緒に押しても引いても微妙な手ごたえのある領域が見つかった。
そっと手を離すとまさしく宙に浮いたのだった。
これは不思議だ。


一緒にいた友人に「どう思う?」と聞いてみたところ、「磁力と重力が釣りあってるの?」という返答だった。
これが普通の感覚なのかなあ。
上向きの磁力と下向きの重力が釣り合っているという状態はまず作り出せないはずだ。
なぜかというとその状態は不安定な平衡点だからである。


平衡点というのはつまり釣り合いが取れている点ということだ。
例えばボールをヒモでぶら下げて落ち着いたときに、このボールは平衡点にある。
ボールをちょっと動かしてもそのボールは元の位置に戻ってこようとする復元力が働く。
一方で例えば棒の端にボールをつけて上を向けて立てると、この棒はある地点でバランスが取れる。(ボールをつける必要は無いのだがまあ見た目分かりやすいかと思ったので)
しかしこの棒は、ちょっとでもつつくと倒れてしまい復元力は働かない。復元力が働かないどころか、平衡状態から離れていこうとする力が働いてしまう。

前者を安定な平衡点、後者を不安定な平衡点という。
理系的に言えば、近傍での極大点を不安定な平衡点、極小点を安定な平衡点というということになる。


浮いている地球儀を上に引っ張り揚げる磁力と重力で説明しようとすると、これは不安定な平衡点になってしまう。
まず、釣り合いが取れている点から少しでも磁石に近づけば磁力は強くなり、ますます磁石に引っ張られる。
また、遠ざかれば磁力は弱まりますます重力に引かれて遠ざかることになる。
つまりこの方法では、非常に不安定な平衡点しか作り出せないのだ。


じゃあどうすれば安定な平衡点が作り出せるだろうか。
近づいたときと遠ざかるときの強さの変化ぐあいが異なるように2つの磁石を組み合わせればなんとかなりそうな気がする。
フレームの中心部に斥力を発生する磁石、周辺にリング状に引力を発生する磁石を配置してみるというのはどうだろう。

地球儀をフレームに近づけたときに、中心部に近づくスピードのほうが周辺部に近づく速度より速いので、斥力の強まり方のほうが強くなり一定以上に近づくことは出来なくなるはずだ。
また引力の水平成分は打ち消しあうので、垂直成分だけを考慮すればフレームに近づくと引力はほとんどなくなってしまう。
磁石の強さパラメータなどは自由に決めてよいので、適当に調整しながら引力と斥力それぞれとフレームの距離の関係をグラフにしてみると次のようになった。

引力側の磁石を強めに設定しても、近づくにつれて斥力側が支配的になる事がわかる。
このため地球儀は一定以上フレームに近づくことは出来ない。
つまりこのグラフでは距離8の付近が安定な平衡点となる。


と、ここまで考えたのだがこのモデルでも実は無理がある。
この方法だと、実は斥力を発生する磁石をよけて周辺の引力の磁石にくっついてしまうのだ。
つまりこのモデルは垂直方向だけに安定なので、3次元内で考えたときには安定ではないのだ。


ここらへんでもうひと工夫必要なのだが、なんにも思いつかなかったのでもう降参。
ネット上で色々検索してみたところいくつか説明が見つかったが、どれも同じことが書いてある。
おおむね次のような内容だ。

アーム上部にあるセンサーからの信号を台座部分のマイクロコンピュータが読みとり、電磁石に絶妙なコントロールを行っています。

なんだよそれ!
インチキ!
(`Д´)ノ