HDDレコーダの普及でCMの価値下落

NRIから出た〜HDRユーザの過半数がテレビCM80%スキップ、今年の損失総額は約540億円に〜という調査結果をあとでちゃんと読もうと思っていたら、なんか計算のしかたがおかしいという指摘をしている人がいてちょっと話題になっているようだ。
孝好さんという方のニセモノの良心というサイトで、6月2日くらいからの一連の記事がそれだ。
確かにNRIの計算は明らかにおかしい。
じゃあどう計算すれば納得のいく数字が出るのかという点についてはいくつかの考え方があるみたいだが、基本的には「番組として観られている」にも関わらず「CMはスキップされている」ようなケースがどれだけあるかというのが問題なはずだ。


まず前提として、ニセモノの良心さんのところにもあるテレビ広告費2兆500億円という数字は、現在の日本の視聴者の総視聴時間に対して支払われているという点に問題は無いだろう。
チャンネルが平均して5局あるとすると延べの放送時間は120時間。日本人の1日あたりの平均テレビ視聴時間が4時間くらいだったはずなので、放送されている全番組の中で見られていないものは97%くらいあることになる。
2兆500億はこの状態に対して払われているので、「そもそも視聴者に届いていないCMの分の広告費、つまり97%は無駄になっているのではないか」などと考えることには意味が無いはずだ。


また、「現在の調査法では録画分は視聴率に入れられていないから元々関係ない」という主張もあったがそれには賛成できない。
録画番組のCMスキップを機会損失と考えるなら視聴率のことは無視してもおおよその数字を計算することには意味があると思う。


ではこの2兆500億を元に、スキップされている分にかかっている費用を計算するには、
 広告費 x HDDレコーダの普及率 x HDDに録画して視聴される番組の割合 x 平均CMスキップ率
これだけでいいはずだ。
もっともここでは大雑把に、「録画してみる番組とリアルタイムで観る番組の視聴時間の合計はHDDを持っているかどうかに影響されない」と仮定している。
HDDレコーダを持っている人のほうが番組視聴時間が長いという話もあるようだが、これは番組視聴が長い人ほどHDDレコーダを買うということかもしれず、相関はあるが因果関係としてどうなっているかはちょっと不明なのでとりあえず無視する。
また1日4時間の視聴のうち、「HDDに録画して視聴される番組の割合」のデータが無いが、仮に30%くらいと仮定してみる。仮に、ですよ。
すると計算としては
 2兆500億 x 11.9% x 30% x 64% = 468億
あら、だいたいNRIと同じ数字になった。
なんかいろんな人がいろんな考察してるけど、僕が思うにこれ以外に考えるべきファクターは無い気がする。


ちなみにこの数字が540億になると仮定して、「HDDに録画して視聴される番組の割合」を逆算してみると、34.6%になった。
なんかNRIが計算の根拠にしてる「録画消費率」って数字にヤケに近い。
と思って元記事とか色々見返してみたら、

録画消費率34.2%とは、HDRユーザーのテレビ視聴時間のうち、
HDRで録画した分を視聴している時間の割合です。
すなわち時間の概念になります。

とか書いてあるな。すっかり見落としてた。
ああ、録画消費率なんて名前だから録画した番組のうちどれだけ見てるかって意味かと思ってたけど、これはつまり僕が「HDDに録画して視聴される番組の割合」って書いたのと同じものだな。
ってことはNRIの計算であってるじゃん。
言い訳だけど、NRIからの回答メールの分がヘタクソだから斜め読みしたとき意味が分からなかったんですよ。
ってことで、最初にNRIの計算は間違ってるとか書いちゃったけどウソです。NRIがパラメータに変な名前付けるから読み違えてただけで、ちゃんとあってます。多分。
なんかイマイチひねりの無い結論になっちゃったなあ。


もっとも実際には考慮すべきファクターは他にもたくさんある。
リアルタイムで見てる番組は単に垂れ流してるだけど集中して見てるワケじゃないことが多いのに対してHDDに録画してる場合はわざわざ見たいと思ってみているので、集中の度合いはけっこう違うはずだ。そうすると、スキップされてない36%分はリアルタイム視聴より訴求力が高い可能性がある。
また、さっき「相関しか分からない」と書いたが、実際にHDDレコーダを持つと総視聴時間が増えるかもしれない。
ここいらへんは僕個人では調べようが無いので、まああんまり気にしない方向で。