心臓打ち止め

「テレビでやってたんだけど、一生の脈拍の数って決まってるから脈を量ると寿命が分かるってホントですか?」と聞かれた。
うーん。
そんな話聞いたことが無いなあ。
ちょっと検索してみたが、3月10日くらいにやったテレビ番組で、次のような内容が紹介されていたらしい。

  • 人間の心臓は23億回脈を打つことができるので、一分間の脈を計って割り算すると寿命が計算できる

がんばって探したけど根拠がどこにも示されてないな。
なんか生涯で撃てる弾の数は決まっていて最後に赤い玉が出る、みたいな話だ。


似たような話として僕が知っているのは、

  • 小さな生き物は脈が速くて寿命が短い。大きな生き物は脈が遅くて寿命は長い。どの生き物も平均して死ぬまでの拍動の数は15億回程度である

という話だ。
かなり昔にゾウの時間ネズミの時間で読んだのだが、15億回という回数には自信が無い。
一部のウェブサイトでは20億回と書いてあるところもあるが、完全に定量的に考えられるようなものでもないと思うので「ほぼ同程度の回数」というくらいに考えておけばいいのだろう。
小さな動物は体積に比べて体表面積の割合が高いので、体温維持のための代謝は活発になる。
また、代謝の維持のためにエサの摂取サイクルも短くなるしエネルギーをどんどん送り出すために脈拍は速くなる、というのは自然なことに思える。
また、小さな動物より大きな動物のほうが寿命が長い傾向があると言うのも経験的には納得できる。
じゃあ寿命に関して原因がどの辺にあるのかというと、体細胞の分裂回数に上限があるとかそのあたりと関係があるのかもしれないがいまひとつ確信が持てるような原因が思い当たらない。
いずれにしてもこの話は、『そういう傾向がある』という話であって、上限が決まっていると言う話ではない。


例えば人の生涯の収入と職種にはかなり高い相関があるはずだが、ある仕事をしていてその職種の標準的な生涯賃金をもらってしまったからと言ってそこで引退すると言うことにはならない。
脈拍についても23億回はあくまで人間の平均的な生涯の拍動数で、これが上限と言うことでは無いはずだ、と思う。
むしろ寿命と脈拍については、標準よりも脈が速い人も遅い人もなんらかの疾患をかかえていたりして寿命が短い気がするし、運動をまったくしない人は脈拍は少ないが循環器呼吸器系の疾患のリスクが高くなるのではないだろうか。


ここまで書いてひとつ、脈拍に上限がある話を思い出した。
10年以上も前にムーかなにかに「人間の脈拍、呼吸の数、食べられる食事の量には上限がある」という話が載っていた。
その記事には「インドの行者バジジさんは一日に一度しか心臓を動かさず、呼吸は一ヶ月に一度。現在1700歳」と書いてあった。


ところで、このテレビ番組で「上限は23億回」の根拠がどのように示されていたのかが非常に気になる。
どうにも根拠のないヨタ話だと思うのだが、どんな話だったのか分からないと否定のしようもない。
だれかこの番組見た方がいたらその辺をかいつまんで教えてください。お願いします。