二つの封筒のディレンマと錯誤(補足)

この件で訪問してくれている人が多いようなので少し補足してみる。
このパラドクスに対して多くの人が様々なアプローチをしているようだけど、いろいろ考えている間に行き着いては僕自身が納得行かなかったものがたくさんある。
のでそれぞれのアプローチに対しての僕の考えを示しておく。
あくまでこれは僕がこう考えたと言うことであって僕が間違ってるかもしれませんが。念のため。

封筒の中身の上限が無限だという前提には現実性が無いというアプローチ
封筒の上限を一定のところで区切ったらこの不思議さはあらわれない。つまり封筒の中身が無限だという非現実的な仮定が不思議さの元であって、それは考えてもしょうがないというアプローチ。
あくまでこれは空想上のお話であるので、こういうアプローチにはあまり意味が無いと思う。
封筒の上限を設定した場合のストラテジー二つの封筒のディレンマと錯誤(3)で触れているが、この場合には一つ目の封筒を開けたあとでとるべき行動が明らかに決められる。
このアプローチはこのパラドクスの不思議さが無限から来るということそのものを結論として採用してしまっているため、なぜ上限が無いとパラドクスが起こるのかという点についてなんの説明もしていないと思う。

封筒の中身の分布が一様とは限らないというアプローチ
どんな金額がどのくらいで入っているかは問題の条件として規定されていないというアプローチ。
典型的には「自分が胴元の立場に立ったとしたら大きな金額ほど入れたくないだろう」とか「無限の金額というのは考えにくいので大きな金額ほど入っている確率は少ないだろう」と言った考え方か、「各金額が現れる確率はまったく未定義なので期待値も計算できない」という考え方で結論付けられていることが多い。
このアプローチは元の問題が提示しているパラドクスを問題の条件を恣意的に解釈しなおすことでパラドクスじゃないようにみせてしまおうという、いわば"ズル"だと思う。
なんなら「封筒の中に入っている金額は完全に一様ランダムである」と問題に条件をつけてしまってもいい。
そうしてしまうと、その条件の下で現れるパラドクスに対してこのアプローチではなんの説明も出来ない。

封筒の片方を開けた時点でもう片方の中身は決定しているので、2倍と2分の1は半々ではないというアプローチ
二つの封筒の中身は開ける前から決まっているので、片方開けた時点でもう片方は決定してしまうという考えかた。
別の言い方をすれば、この二つの封筒のゲームと第二回目に書いた問1Aの「封筒を1つ開けた"あとで"サイコロを振って、偶数が出たら2倍、奇数が出たら2分の1をもらえる金額にする」というゲームは別のものだという考えかた。
条件付確率ということをよく考えてもらうと、実際にはこの二つのゲームで得られる期待値は同じものになるはずだということが分かってもらえると思う。
条件付確率の例題:二つの封筒に、赤と青と黄色の3つの玉のうち二つを目をつぶって選んで1つづつそれぞれの封筒に入れました。そのあとで目を開けて封筒を1つ開けたら赤い玉が入っていました。もう1つの封筒に青い玉が入っている確率はどれだけでしょうか。


実はこの二つの封筒のパラドクスを説明する時に前回使った類題4は条件としては弱すぎたためにいらない誤解を招いてしまったかもしれないと思っている。
書いてあること自体が間違っているとは思わないが、部分の平均と全体の平均をつかったもう少しわかりやすい説明を思いついたので1、2日中にまとめてみたいと思う。

上記以外のアプローチをしている例があったら教えてもらえると嬉しい。
実は他にももう少し色々考えた記憶があるんだけど、一ヶ月近くにもなってわりと思い出せなくなってしまった。