二つの封筒のディレンマと錯誤

たまに見に行くふたばでこんな問題が盛り上がっていた。
何度か見たことがある問題なんだけど、改めて見てみると微妙に釈然としない。
以下問題

 問0 封筒AとBがある。
中には1:2の比率でお金がいれてある。このとき、
 (1)封筒Aに大きい方の金額が入っている確率はいくらか
 (2)封筒Aを開けたところ、一万円が入っていた。大きい方の金額である確率はいくらか
 (3)(2)のとき、Bを開けたときの、金額の期待値はいくらか

ここでは(1)(2)(3)の順で答えさせることによってミスリードするようになっているが、典型的には次の形で出題されることが多い。


 問1 封筒AとBがある。
 中には1:2の比率でお金がいれてあるがどちらが1でどちらが2かは分からない
 このとき、封筒Aを開けたら一万円入っていた
 あなたはこれをそのままもらってもいいし、もう一方の封筒と交換してもいい
 一度交換したら元には戻せない
 封筒Bに交換するとのそのままにするのはどちらが得か 


ちなみにこの問題を昼食時に会社の同僚に出して見たところ次のような回答が得られた
 −欲を出すとろくなことが無いので一万円で満足する
 −封筒の重さを測ってから決める
 −相手の表情をよく見る


算数の問題だと断わってたのにこれだ。
お前ら全員エンジニア失格。


しょうがないので自分でちょっと考えてみる。
まず思いつくのは


 解1 封筒Bには封筒Aの2倍(20000円)または半分(5000円)の金額が入っている
 また封筒Aの方に入っていた金額が大きい方だった可能性と小さい方だった可能性は半々である
 すなわち
 封筒Bの中身の期待値 = 20000*(1/2) + 5000*(1/2) = 12500 円
 なので交換したほうが得


なんとなく納得してしまいそうだ。
でもなんかおかしいぞ。
問題がこうなってたらどうだろう。


 問2 封筒AとBがある
 中には1:2の比率でお金がいれてあるがどちらが1でどちらが2かは分からない
 このとき、封筒Aを手にとってまだ開けていない
 あなたはこれをそのままもらってもいいし、もう一方の封筒と交換してもいい
 一度交換したら元には戻せない
 封筒Bに交換するとのそのままにするのはどちらが得か 


解1の考え方をちょっと修正するとこうなる


 解2 まだあけていない封筒Aに入っている金額をX円とすると、
 封筒Bには2X円またはX/2円の金額が入っている
 また封筒Aの方に入っていた金額が大きい方だった可能性と小さい方だった可能性は半々である
 すなわち
 封筒Bの中身の期待値 = 2X*(1/2) + (X/2)*(1/2) = 1.25X 円
 なので交換したほうが得


どっちも開けてない封筒を最初に無作為に選んでからそのまま交換するだけで期待値が上がってしまう。
これはいかにもおかしい。
封筒Aと封筒Bに差違はないので、交換してもしなくても期待値は変わらないはずであり、事実そのとおりだ。


ネット上で検索してみたらけっこうがんばって説明を試みているサイトがあったが、事実と上記の説明に出る食い違いについてうまく説明できているものを見つけることが出来なかった。
勝手に条件を追加して問題の本質を歪めてしまっている説明も多かった。


ここでは、封筒を交換することに意味は無いという前提に立って、封筒Bの中身の期待値はいくつになるのか、なぜ解1の説明がもっともらしく見えるのかという錯誤に関して考えてみることにする。
実はこの問題に関して僕自身もまだはっきりとした考えがまとまっていないので、もしかしたら最後までスッキリしないかもしれない。


次回から考察