ビッグマック指数は交換レートの指標か

たったいまワールドビジネスサテライトを見ていたら、進む円高と政府の介入みたいな話をやっていた。
その中で「適切な交換レートは一体いくらなのか」という話題になった時に、だいたい次のような内容が放送された。

英国の経済史「エコノミスト」では生活感に近い物価の指標としてマクドナルドのビックマックの値段を基準にしたビッグマックインデックスを発表している。
現在の日本のビックマックは262円でアメリカのビッグマックは2.9ドルである。
つまり適切な交換レートは1ドル=90円である。

言葉遣いまでまったくこの通りだったわけではないが、録画していたわけでもないのでカンベンしてください。

気になる点は二つ。

まず、ビッグマックの値段自体がそもそも交換レートに大きく依存して決まっているということだ。
ビッグマックの原材料のかなりの部分は輸入材料だ。
以前にマックのハンバーガーを59円で出せた条件として1ドルが110円前後の円高が必要だったと月刊食堂かなにかで読んだ記憶がある。
仮にワールドビジネスサテライトの主張通り1ドルが90円になったとすると、材料原価の引き下げでビッグマックは240円くらいになる可能性がある。
そうしたら今度は1ドル=80円なのか?
最終的にはどこかでバランスするんだけど、現在のビッグマックの価格をもって交換レートの根拠には出来ない。

そしてそれより重要なのは、エコノミストビッグマックインデックスはそもそも軽いお遊びだということだ。
この数値がある程度の指標になっていることは否定しないが、まともなニュースの流れの中で取り上げると不要な混乱を招く。
この指標が厳密には意味が無いのはなぜかというと、ビッグマックの値段は各国の戦略によって価格付けの原則が違うからだ。
僕が知っている限り、日本ではビックマックは戦略的に安売りしているはずなのでアメリカの実勢価格よりも割安感があるのだ。
アメリカでビッグマック2個分の5.8ドル出すとスパゲーティにサラダとデザートと食後のコーヒーがついてしまったりするのだが、同じものを日本で食べようと思っても524円ではまず無理だろう。
ちなみにエコノミストではスターバックスインデックスも発表していて、こちらなどはさらに現地の生活感を反映しないものになっている。
スターバックスは世界中どこに行ってもそんなに変わらない値段で売っているので、賃金の安いタイとか中国に行くとラテ一杯が肉体労働者の一日の賃金だったりするのだ。