借りたモンは返すのが人の道っちゅうもんやないけ?

ボーナスも無事出たので日本育英会奨学金を返してきた。
卒業してから11年目、年に一度、12万円づつ返している。
特に在学中の最後の二年間は仕送りなしでやっていたので、育英会奨学金がなければかなり困難だったはずで大変ありがたかった。
ところでこの日本育英会奨学金事業だが、ちょっと前から独立行政法人 日本学生支援機構へ移管されている。
そういや去年あたり債権移行のおしらせが来てた気がするな。(債権のこととかこんな適当に扱うと簡単に詐欺に遭うから今後気をつけたい)
さて、なぜ独立行政法人化されたのかという点についてはあちらこちらの政治的な思惑があったと思うが、表立った理由とされているのが「延滞が増えて資金難に陥っているから」ということだったらしい。
育英会奨学金を借りておいて返さない人が増えているという話は以前から聞いていたが実際本当だろうか。
思い立ったが吉日なのでちょっと調べてみるか。


まずは日本学生支援機構の公式サイトを見てみたが返済実績のデータなんかが載ってない。
グーグルの神にお伺いを立てたところ、総務省のサイト内の
 日本育英会の財務調査結果の概要
 日本育英会の財務調査結果(総合評価)
などが引っかかってきた。
ここ数年で延滞されている金額は570億から1100億へと倍増しているということらしい。


ところでこのページ中段の「延滞債権の翌年への移行率」を見ると、滞納1年以内の人はその年の内に70%が返済している。
1年間滞納しても2年目には残りの40%が払っている。
という風にしていくと、3年目までに9割以上の人が払っていて、10年あたりでは97%の人が払っていることになる。
元々はもっと悪くなかったのかもしれないが、現在でも最終的に97%も返済されているということはかなりの人がきちんと返しているということではないだろうか。
しかもこの97%は一旦滞納した人の中で最終的に返済した人の割合だから、元々滞納しなかった人まで入れたらほんとに100%近く返済されているってことじゃないだろうか。
ついでにこの記事の中で

延滞期間の長期化の状況をみると、
・  1年未満のものの移行率は30.4パーセントと低い
→ すなわち、回収率は69.6パーセントと高い
・  延滞期間が長期化するほど、回収は困難
 いったん滞納となった債権は、滞納後1年未満に回収することが肝要

なんて書いてあるけど、このデータ見てもこんなこと言えないと思う。
だってこのデータだけじゃ、長期滞納が元から払う気がないのか最初に払わなかったら徐々に常習化したのかが分からないからだ。
もしハナから払う気がない人が長期化してるってだけなら、初めのうちに回収しようっていう労力は無駄になってしまうかもしれない。


しかし、これだけの人がちゃんと返しているのになぜ延滞金が倍増するのか。
さらにいろいろ見ていくとこんな記事に出会った。
 日本育英会から日本学生支援機構へ── 奨学金はどう変わる !?
この記事の中段、「日本学生支援機構奨学金の貸与人員の推移」を見ると、新規に奨学金を借りる人はここ数年で倍増している。
案外話は単純で、この辺が原因なんじゃないだろうか。
貸与額が倍増すれば、滞納する人の割り合いが変わらなくても滞納額は倍増するのは当然だがどうだろう。


実際の原因を追求するにはもうちょっと細かいデータが必要だ。
滞納し始めてからのデータはあるんだけど、返還開始の初年度からすぐに滞納した人と途中から滞納した人の割り合いの年度別推移なんかがあるともう少し実体が見えてくると思うんだが。
いずれにしても、「最近は借り倒しの人が増えてるんだよ」みたいな言い方がされているのから感じていた印象とはちょっと違う感じだ。
これまであまり積極的な督促が行われていなかったにもかかわらず97%もの人が返済しているということは思ったよりみんなまじめに返しているのだなあって感じだ。
やっぱり独立行政法人化のメインの目的は、慈善事業をやめて有利子貸し付けを増やしたいってことなのかもしれないな。
いままで第二種奨学金って名前だったやつは「きぼう21プラン」って名前変えて、年利3%の貸し付けになってる。
最終的に返済率が97%もあって、しかも督促をもっと強化していくってことは年利3%でもかなり確実な儲け話だからね。