テスト・ザ・ネイションの結果の読み方

楽しみにしていたテスト・ザ・ネイションも終わった。
ネットの仲間とリアルタイムで連絡取り合いながら受けて大変面白かった。
それと終わった瞬間に実家から電話がかかってきて「IQいくつだった?どうせやったんだろ?」とか言われたのはなかなかよく分かってらっしゃるという感じだった。
僕自身の得点や知能指数はまあいいとして、この番組で出た結果の見方について思いついたことをいくつか並べてみる。


まずそもそも知能指数というのはなんなんだろうか。
番組中で古館が何度も「知能指数というのは頭の良さって意味じゃないんです。個性なんです」とか言ってたがこれは違う。
まあ古館というか番組としては差別とか人をバカにした態度に繋がらないように配慮したんだろうけど。
知能指数は大雑把に言って頭のよさの指標だ。
また、よく
 知能指数=精神年齢(あるいは知能年齢)÷肉体年齢x100
と書いてあるのを見かけるが、これは誤まり。
発育途中の幼児などの知能の発達が線形だという(かなり乱暴な)仮定の元でのみこの定義は意味があるが、だいたい40歳の人が20歳の2倍頭がいいはずだなどという前提が無意味なのはちょっと考えてもらえば分かってもらえると思う。
実際は知能指数というのは「同じ問題を統計的に意味があるほどの人数に解かせて、平均が100になるように調整したもの」ということになる。
つまり理想的には全人類の平均は常に100だ。
また、平均点を取った人の知能指数は100になる。(平均点を取った人が最も一般的な人かという点はまた別の議論だが)

こういう話をすると、「でも頭の良さなんて色々あるでしょう。知能検査は時間制限があるけど、時間制限がなければ全問正解できるはずの人が知能検査では点数が低いとかそういう可能性もあるんじゃないの?だから知能指数が高くても頭がいいとは限らないでしょう」とか聞いてくる人が非常に多い。
これはある意味当たってる。
頭の良さなんてものには色々なパラメータがあって、「新しいことを思いつくのが得意な人」もいれば「ゆっくりやればどんな問題でも解ける人」も「多少間違うけど人の10倍のスピードで問題を解ける人」もいる。
しかしそもそも知能指数の目的は単なる指標でしかない。
あたまの良さなんて漫然としたものを1つの数字で表してしまおうというのだから、これは非常に乱暴な指標になってしまうのはどうしようもない。
だって「ゆっくりやればどんな問題でも解ける人」も「多少間違うけど人の10倍のスピードで問題を解ける人」のどっちが「頭がいい」かなんてものに絶対的な比較なんかできるわけないんだから。
デカスロンという陸上競技を知っているだろうか。
10種類の陸上競技を順にこなしていって、「100M走は何秒で何点」「幅跳びは何mで何点」「槍投げは何mで何点」と点数をつけて合計の点数で競うという競技だ。
知能指数というのはこのデカスロンの点数みたいなものだと思ってもらえばいい。


また、こういう質問をしてくる人もいる。
「知能検査なんてパズルとか好きで普段やってる人は高い点数取れちゃうよね。じゃあみんなが平等な条件で受けられるわけじゃないし、『本当の意味での頭の良さ』は測れないんじゃないの?」
こういう人は、なにか「神様が与えてくれた絶対的な頭のよさの指標」みたいなものがあって、知能検査でそれを測定することができると漫然と考えているのだ。
これは知能指数というものに過剰な期待をしている。
頭のよさというのは特定の状況化での対応という形で測る以外に測りようがないし、そういう測り方をする以上はその状況になれている人のほうが頭がいいということになってしまう。
だから当然普段からパズルが好きな人の知能指数は高くなる。別にパズルじゃなくてもいいけど、普段から色々頭を使っている人はそれによって『頭が良くなる』のだ。ある問題をすでに知ってて答えるのも初めて見てその場で考えて答えるのも結果は一緒だと言うことだ。
もちろん知能検査だけを目標にした訓練を行うことで知能検査の結果を上げることもできる。


知能指数の解釈というのは結局、「ある状況化で測定した、その状況への対応力」という意味での頭のよさということになる。


知能指数の話はまあここまでにして、今回のテスト・ザ・ネイションの話。
今回は番組の進行とオンライン解答用のアプリに多少の不備が見られたと思う。
例えば記憶セクションのペア記憶と聴覚記憶の順番が前後するところはかなり混乱する視聴者がいたと思う。
アプリのほうは最後のページで[次へ]を間違って押すともう戻れなくなった。
また、僕の手元ではQ61-65とQ66-70のページタイトルが入れ替わって表示されたりQ66−Q70が表示されなかったりした。(このために3回やりなおした)。これは他の人のところでも起っていたようだ。
文句はここまでで、次に結果に関して少し。


今回のオンライン受験者はトータルで55万人だった(と番組中で言っていた)。
これだけのサンプルがあれば統計的に十分意味のある数字が出てきていると考えていいと思う。
入力させたプロフィールを元にグループ分けした数字などが出ていて、いくつかは興味深かった。


まず全体の平均。
これは特に発表されなかったが、血液型別の平均が
 A - 106
 B - 106
 O -106
 AB - 105
でほぼ差がなかったので(当然だ)、全体の平均は106と考えていいはずだ。
おそらくはA、B、Oは106前半でABは105後半のはずだと思いたい。
なぜ平均が100にならないのかというと、ネットで接続してまでこんなテストを受けるのはこういうことに興味がある人であって、その時点で偏りが生じているからだ。
ここで事前に行った予備テストを元に知能指数を測定するという方式に意味が出てくる。


都道府県別ではわが茨城は103だった。
都会が高いはずだと思っていたが、福井や滋賀、宮崎なんかの田舎の方が知能指数の平均が高い。
これはどう解釈すればいいだろう。
僕が思いつく理由は二つ。
−田舎の人はこんなものに興味をあまり持たないので、比較的頭のいい人だけが参加する傾向がある。
−田舎は参加人数が少ないので統計的な偏りが残っている
いずれにしても完全に憶測。


男女別では
 男 - 107
 女 - 104
となっている。
平均が106だとしたらつまり男の方が参加人数が多いということになるけど、実際は省略されている小数点以下が見えないのでなんとも言えないな。
ところで、男女別で差が出るのはなぜだろう。
WAISの知能検査では知能は言語性知能動作性知能に分かれている。
今回のテストでは「言語」と「記憶」が主に言語性知能で、「論理」「数」「知覚」は動作性知能的な側面が強い。
一般的な傾向としては、男は動作性知能が高く、女は言語性知能が高い。
今回のテストは言語性の問題が25問で動作性の問題が45問なので女性に不利なのだ。


頭髪の残りぐあいでは一見驚くべき結果が出た。
 フサフサ - 107
 少々 - 105
 無し - 101
そんなバカな!と一瞬思ってしまったし、古館も「これはたまたまそう出たんであって」とか頑張ってフォローしてた。古館必死。
でもこれはよくよく考えたら当然の結果だ。
今回のプロフィール入力の年齢レンジで、一番頭髪が抜けていく部分は35−50歳の部分だ。
35歳ではフサフサの人が多いし、50では少々とか無しが増えてくるだろう。
頭脳の活動は30歳くらいがピークでそれからは徐々に衰えていくので、35歳の人より50歳の人のほうが知能検査の正答率は低くなる。
この人たちをひとつの年齢レンジとして扱って知能指数を計算するので、当然フサフサの人のほうが知能指数が高く出る。
つまりこの結果は年を取ると知能検査での正解数は減っていくということを別の言い方で表しただけだ。


次にバストの大きさ別。
 Aカップ - 104
 Bカップ - 104
 Cカップ - 104
 Dカップ - 104
 Eカップ - 104
見事に全部同じ。
胸の大きさで頭のよさが変わるとは思えないから一見妥当な結果に思える。
そしてこの結果と上記の頭髪の件をあわせて考えると驚くべき事実が浮き彫りになる。
女性の胸は年をとってもしぼまないでただそのままの大きさで垂れ下がるということだ。


他には、えー、会場に東大生があれだけいて会場2位が136ってのはショボいなあ。
納豆食べる人とかモーツァルトを聞く人の統計もあとでどっかに載るんだろか。
あと56歳で登録して全国トップとるのズルい。