米国産牛肉の全頭検査は実施すべきか

すでにちょっと古い話なのかもしれないが、狂牛病騒ぎで全頭検査を実施するべきかという話がわりと話題な気がする。
米国産牛肉の輸入とのからみで生後20ヶ月以内の牛を検査から除外するという国の方針に対して各都道府県が一斉に独自に全頭検査の継続を発表しているようだ。
いつまで消えずに残ってるか分からないけど関連ニュース
流れはこうだ。


生後20ヶ月以内の牛を検査から除外するという国の方針が打ち出された

一部都道府県が自県産牛肉のブランド戦略の一環として全頭検査継続を表明

検査継続するものに対しては引き続き検査費用を助成することを表明

費用の助成が受けられるならと各都道府県が追随


20ヶ月未満の牛の割り合いは数字として見つけることが出来なかったが、少なくとも全頭検査の助成費用としては年間30億円が使われている。
これははっきり言って無駄以外の何者でもない。
だって30億円ですよ?


別に僕は狂牛病の危険性など無いと言っているわけではない。
可能性の低いものに多額の対策費用をかけることはコスト対効果が薄すぎる。
20ヶ月以下の牛に検査をしないという話だって別に20ヶ月以下の牛は安全だとか誰も確信していないだろう。
20ヶ月以下だと検査してもほとんど見つけられないということなんだから、検査なんか100%無駄だということになる。
だからその部分が不安だったら20ヶ月未満の牛は食べないという選択肢しかない。


だいたい最初に全頭検査継続を表明した県なんかはブランド化のためにやったわけだし、尾辻秀久厚生労働相(名前初めて知った)もそこのとこは認識している
だったらそんなのはやりたいとこだけにやらせておいて、その費用は検査済みの肉を食べたい人だけが負担すればいい。


これが米国産牛肉の話になるとさらにスケールが大きい。
米国産牛肉の全頭検査を仮に行うと、その費用は1000億円くらいと見積もられているようだ。
狂牛病の牛への感染経路が知られていない(いまでもはっきりとは知られていないが、疫学的におおよそのところは特定されている)ころには感染した牛を何十万頭もモリモリ食べてたわけだが、実際に人間で感染した人は150人とかそんなもん。これとかこれとか。
牛の廃棄物を牛に食わせるようなことをやらなくなった今では感染した牛自体が(これまで実施された検査のサンプルから見ても)3桁から4桁減ってるということを考えると、今後全頭検査を行わなくてもせいぜい1人か2人しか死なない計算だ。


そうすると、問題は非常にシンプルで、『1人の人間を助けるのに1000億円使っていいか』ということになる。
ここまでしてでも全頭検査を行うべきだと言っている人はお金というものがなんなのかがまったく見えていないと思う。
「お金なんか所詮お金でしかない。人の命には代えられない」とか言い出すのかもしれないがそれは違う。
お金というのは人の命だ。
人一人の命の値段はいくらくらいだろう。
考え方はいく通りもある。


例えば会社員の給料。
こないだ会社員が一生でもらえる給料と退職金は2.2億位だという話をした。
これは人間が自分の人生のうちで起きてる時間(寝てる間は死んでるのと同じだとのび太も言っていた)の約4分の1を切り売りして得るお金なので、人間1人の人生はだいたい9億円で買えるということになる。
つまり米国産牛肉の全頭検査を行うということは100人殺すのと同じだ。


また去年の自殺者の統計によると経済苦で自殺してる人は4000人近い。
1000億を山分けして1人2500万円あればこの人たちのほとんどは死なないですんだ。


ユニセフなんか見ると、1000億もあったら何百万人も助かっちゃいそうですよ!


別にそういう使い方をすべきだというつもりはまったく無いが(経済苦で自殺する人にはもちろん本人が原因の人もたくさんいるわけだし)、ただ、1000億というのはそれほど大きいお金だということだ。
コスト対効果を考えずにお金は人の命には代えられないなんて言っちゃってる人は、身の回りレベルの100万円とかと1000億円がゴッチャになっている。


利根川先生も言っているように、時々金は命より重い。